先日は工房のスタッフ方のご自宅にエアコン設置工事にお伺いしました。
そのスタッフの方の職場とは・・
工房には心地の良い木の匂いが立ち込めています。
一体何を作っているのでしょう?
見学にご協力いただいたのは町田市野津田町にパイプオルガン工房を構える「マナ オルゲルバウ」の皆様です。
[株式会社マナ オルゲルバウ MaNa Orgelbau AG 公式ホームページ]
写真は作品のひとつ、水戸芸術館のパイプオルガンです。
日本人の手で作られたオルガンとしては国内最大級を誇ります!
穏やかな野津田の風景によく馴染む工房「マナ オルゲルバウ」は、ドイツで修行をしてOrgelbau Meister(オルガン制作の親方)の資格を取得した2人の社長さんによって1985年に設立されました。
設計から制作・調律・メンテナンスを行うパイプオルガンのプロフェッショナルです。
近隣では桜美林学園のチャペル、市内の教会にも作品を納められています。
公式HPの作品一覧をご覧ください。きっとみなさんの知っている施設があるはずです!
とても広い工房です。まさに今職人さんが作業をしています。音楽好きの代表と私にとっては目が輝く瞬間です!
パイプオルガンの制作はまるで建造物を造るような大規模な作業です。
製図は手書きやCADを使って行われます。
想像以上に、建築業に携わる私や読者の方々にとって親しみやすいと感じませんか?
楽器の王様と呼ばれるパイプオルガン。
鍵盤がありますから一見ピアノと似ているように感じますが、実はそのしくみはリコーダーなどの管楽器と同じなんです。
パイプオルガンは鍵盤を押すことで風をパイプに送り、空気を振動させて音を出します。
マナ オルゲルバウの皆様が手掛けた水戸芸術館のパイプオルガンの音色を聴いてみましょう。
水戸芸術館 パイプオルガンのご紹介 |Ogran in the Art Tower Mito
こちらは個人宅で使われていたパイプオルガンです。オーバーホール作業の最中です。
楽器の中身を覗かせていただきました!
分解からトラックでの運搬まで、職人さんたちが自ら行うそうです。
こんなに大きく複雑なものを人力で運んでしまうなんて凄い技術です。
こちらの部品は「風箱」と「スライダー」と呼ばれるものです。
パイプオルガンの心臓といわれる風箱は、風を溜めておき、演奏者が選んだ任意のパイプにのみ風を送る役割があります。
風箱の前方に見える、穴のたくさん空いた板がスライダーです。スライドさせることで風を通すか通さないかを選べます。
(ストップレバー)
パイプオルガンにはレバーがたくさんありますね。
スライダーは、演奏者がストップレバーを引いたとき下の板の穴と一致して風が通り、音が鳴ります。逆にストップレバーを押すと、穴がずれて風が通らなくなります。
工房の中には繊細な彫刻の施された素敵な楽器もありました。
なんとまだ持ち主が決まっていないとのこと……ステージアでエアコン工事を頑張って、いつか手に入れたいです!(笑)
こちらはパイプオルガンの大部分を形作る、木材の加工場です。実際に加工しているところを見学させていただきました!
まさに職人さんの仕事場でカッコいいです。
部屋の奥には木材を保管する倉庫があります。
長い年月をかけて寝かせることで乾燥させて「木」から「木材」へ、楽器として使用可能なコンディションを整えるのです。
こちらがパイプです。
1本のパイプからはひとつの音しか出ないため、様々な音色を出すためにはたくさんのパイプが必要となります。
水戸芸術館のパイプオルガンでは実に3,283本のパイプが使用されています。
海外の会社にオーダーしたパイプは熟練の職人さんによる繊細極まる整音作業を経て理想の音色に近づけます。
音色は、設置場所の空間や気温など環境で変化をする非常にデリケートなものです。
パイプオルガンの整音作業は現場の環境に応じて響きをつくることが重要なんですね。
生き物をいたわるようにして楽器と向き合う職人さんたちの姿勢に感動しました。
水戸芸術館のパイプオルガンは東日本大震災にて被害を受けましたが、修繕工事を経て復活し、市民の皆さんに愛されています。
調律やメンテナンスを行うことで永久的に演奏が可能なパイプオルガンはまるで建造物のように歴史に残る楽器でしょう。
取材にご協力いただいた株式会社マナ オルゲルバウの中里威さん、松崎譲二さんをはじめ職人の皆さま、そして高橋さん、誠にありがとうございました。
[株式会社マナ オルゲルバウ MaNa Orgelbau AG 公式ホームページ]