夏に頑張る、誰かにとって大切な職人さんたちへ
関東は早くも梅雨明け。今年も過酷な夏が幕を開けました。ニュースでも熱中症に対する注意喚起が絶えずアナウンスされていますね。
今日は「職人と熱中症」というテーマでお話していきたいと思います。
熱中症による工事現場や工場・作業所においての救急搬送人数は、1位の住居での発症に次ぐ大多数を占めています。(参照 総務省消防庁 ページ下部へ)
また、製造業・運送業・警備業等を差し置いて最も死傷者を出しているのが建築業です。
このデータから分かることは、建築現場での熱中症は重症化しやすいということです。(参照 厚生労働省 ページ下部へ)
決して驚かしたいわけではありません。職人のみなさんが明日から少しでもお仕事の安全性を高められるようにこの記事を書こうと思いました。
私も熱中症になったことがあります。エアコン屋さんの仕事を始めて初めての夏でした。
しかもちょうど今頃、7月の曇った涼しい日の屋内作業中に発症しました。
激しく吐いて作業は打ち切り。ちょうど現場に視察に来ていた社長に連れて帰ってもらいました。
その時は涼しかったので喉も渇かず、汗も出なかったことを覚えています。
恐ろしいのがなんと、その後の話……。その翌日から毎朝、気持ち悪さで目が冷めて吐いてしまうこともありました。
現場でも吐き気が続き、これはおかしいと思って消化器内科に診てもらったところ、熱中症で吐いた日がトリガーとなって胃や食道が荒れているのではないかということでした。
毎朝、消化器の粘膜を治す薬と吐き気が現れた時の頓服薬を飲み続けて症状が収まったのはなんと9月半ば……。
このようなことは珍しいかもしれませんが、茹だった卵がもとに戻ることはないとよくいうように、熱中症で負ったダメージは長い間身体に残るんですね。
熱中症を一度発症するとそのストレスからパニック発作を起こしてしまう方もいらっしゃるようです。
TikTokやYouTubeのショート動画では現場仕事の現状が身近に発信されていますが、最近は熱中症で倒れる作業員の様子が流れてくることも。
その中にはなんと日本という異国の地で頑張る外国人実習生の姿も……。見ていられません。
人の住まい・暮らしを支える職人が倒れてしまっては元も子もありません。
そんな現代の工事現場で、職人の姿は変わりつつあります。
そう、空調服の登場です、大手ゼネコンなどが先陣を切って熱中症対策の呼びかけを行う中で、空調服は急速な勢いで普及しました。
夏の町はマシュマロみたいに膨らんだ職人さんがいっぱい。
よく「それ、本当に涼しいの?」と聞かれますが……空調服の効果は、「製品性能と使い方に依存します」というのが本音!
私は初めて使うときにケチって低容量のバッテリーを購入したら、そよそよとうちわ並の風しか出てきませんでした……。今年はバートルからなんと22Vのバッテリーが発売されました。
しかし最高風力で使っていたら1日は持ちません。また、消耗品であるバッテリーには寿命があります。
特に、酷暑の工事現場という過酷な状況での使用を続けているとその劣化は早いのではないかと思います。そのためかやはり空調服のバッテリーは2~4年の寿命といわれています。
よく体を動かす工事現場ではバッテリーの落下防止措置を行ったり、定期的にファンのお掃除をしたりして故障を防ぎ大切に使うべきですね。
また、40度近い気温の日に屋外で直射日光の中使用してもファンがが吸い込むのは熱気。
ポケットに保冷剤や凍ったペットボトルを入れて使用すると気持ちいい冷気が循環しますよ。
空調服で涼しくなったら、危ないのは水分不足。職人さんの大好きなコーヒーや、緑茶はカフェインを含み利尿作用を促すので脱水には逆効果!お水やスポーツドリンクはもちろん、体を冷やす効果のある麦茶も良いでしょう。
仕事終わりのビールのためにお水を我慢してはいけませんよ。
作業に熱中していると水分補給を忘れることも。しかし身体に不調をきたしてからでは遅いです。
親方さんや上司の方が率先して声掛けすることでみんなが進んで水分補給しやすい雰囲気を作れるのではないかと思います。
また、きちんと睡眠をとること・朝食をとることも熱中症予防の大事な鍵です!
朝の早い職人さんは忙しくて朝食を食べる時間もないかもしれません、ですが睡眠時は発汗によって、気付かない脱水が起こりやすいです。少しでも良いので朝食を食べて水分・栄養補給をし体力をつけてから現場に向かいましょう!
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水分補給とならびに皆さんに活用してほしい筆者のおすすめ「梅干し純」は、純粋な梅干しを乾燥させたタブレットです。
乾燥梅干しタブレットはなんと陸上自衛隊でも利用されている塩分補給グッズです。
甘さゼロで、鼻から抜ける紫蘇の風味が美味しいですよ。ああ、書いているだけで酸っぱくなってきました(笑)、汗をかいたときには水分補給と一緒にどうぞ!
・現場で熱中症の人を見かけたら?
こんなことが起こらないで欲しいですが、今後みなさんの現場で熱中症が発生するかもしれません。
会社の仲間や、違う業種の職人さん…もしかしたら自分かも。誰が発症するかわかりません。
以下、上級救命講習の資格を持つ筆者からのアドバイスを共有します。頭の片隅に置いていただけるといざというときのパニックを軽減することができると思います。
熱中症患者が発生して意識がある場合は、まずエアコンの効いた詰所など涼しい場所へ避難させましょう。
詰所が無く、さらに駐車場が遠くて車で涼むことができなければ、近くのドラッグストアやコンビニに協力をいただいて避難しましょう。
ドラッグストアには冷却材やOS1がありますし、コンビニにも氷や水が売っているので非常時には積極的に利用しましょう。
作業服をゆるめ、帽子やヘルメット、手袋、靴は脱がせます。
太い血管が通っている首・脇の下・脚の付け根などを冷却しましょう。
手のひらや足の裏も効果的です。重症化を防ぐにはいかに早く身体を冷却できるかが勝負です。
患者さんに意識がないことに気づいたらその瞬間に119番に連絡すると同時に別の人間がAEDを用意します。
AEDは24時間営業のコンビニ、駅、学校などの公共施設、病院やクリニック、大きい工場や倉庫などといった会社にも設置されています。
幸い、現場には沢山の人員がいます。連携をとって同時に救護を進めることで救命確率を上げることができるでしょう。
AEDといって必ず話題になるのが、女性の救護問題。これについて、資格取得時に消防隊員さんに直接お話を聞きました。
・パッドを肌に装着することができれば衣服をすべて脱がせる必要はない
・AED装着時にブラジャーを外す必要はない
・救命活動を行ったことでセクハラなどで訴えられるということはありえない
女性に限らず、救護活動時は本人の尊厳を守るためにも、タオルや衣服をかけるなどとして患者さんを公の視線から守ることが必要であると思います。最近は野次馬による許しがたい盗撮行為・SNS流出も珍しくありませんからね。
また人工呼吸については、行う意思のある家族や訓練の経験のある方が、後遺症発症リスクの高い乳児・子どもに対して行うことが多いです。ためらう状況の際は迷わず胸骨圧迫を続けてください。
夏場は救急車が大変混み合います。まれに現場に到着するのが消防車である場合があります。
救急車の到着に先行して救急救命士の資格を持った消防隊員さんが消防車に乗ってやってくるという場合です。
現場にまず消防車が来ても決してパニックにならず、胸骨圧迫を続けながら隊員さんに現状報告・引き継ぎを行ってください!
人々の暮らしやインフラを支える職人さんは、もれなく誰かの大切な人です。夫や妻、恋人、子ども、親、友人などが帰りを待っています。
絶対に健康に夏を越すと約束してください!このブログが明日からの皆さんの安全に貢献することを祈っています。
ー参照文献ー
総務省消防庁 令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況 (令和5年)
厚生労働省 令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)